マイクロプラスチックによる健康被害

マイクロプラスチック(MP)とは直径4ミクロン以下(1ミクロン=0.001ミリメーター)(ここではさらに小さいナノメーター単位も含める)のプラスチックの繊維やフィルム、塊などを言います。
近年になってMPsが地球環境を汚染し続けていることが次第に明らかにされてきました。
また、MPsは一次MPsと二次MPsに大別され、前者は5 mm 以下の粒子状に製造されたMPsで、レジンペレット、肥料のカプセルや洗顔料、化粧品に含まれるMPsなどです。
二次MPsは環境に放出されたプラスチック製品が紫外線や熱、風波などの物理的な力により破砕、細片化したものや合成繊維の服の洗濯時に発生する繊維などです(1)。

いったん環境に排出されたMPsはなかなか分解されずに長期に存在し続けることから地球環境を汚染し続け、しかも年々増加していることから人体に対する悪影響が懸念されています。
多くの生物がMPsを摂食していることが、捕獲された魚介類の調査で確認されています。
直接の摂食だけでなく、食物連鎖を通して移行によりMPs汚染は生態系全体に広がっています。
実際に、MPsが人の多くの器官や組織に検出されています(2)。

MPsの身体内における毒性はMPsそのものによる毒性とMPsに含まれている種々の化学物資の毒性を考慮に入れる必要があります。
添加剤の中にはベンゾフェノン類、フタル酸エステル類のように内分泌かく乱作用や生殖毒性をもつものも含まれています。
ナノサイズのMPsは細胞膜を通過して、生物組織を傷害する可能性があります。
実際にポリエチレン(PE)やポリビニール(PV)などMPsが人の精巣や精液にまで入り込んでいることが分かっています()

身体に侵入するルートは種々考えられます。
まず考えられるのが空気中から肺を通しての侵入です。
実際に人の肺組織から多くの種類のMPsが検出されています。
しかも下肺野ほどその濃度が高いのは空気中からの侵入を物語っています(4)。
また、人の動脈血中に非溶解性のMPs、しかもナノ単位ばかりではなくマイクロ単位の物質さえ検出され同時に血栓中にも検出されています。
そして動脈血中MPs濃度と血小板濃度との間に正の相関があることから、MPsが人の体内に侵入して血栓のリスクを増やしている可能性があります(4)。

私たちの体の組織に侵入するMPsのルートは、先ず①空気中のものから呼吸によって肺→心臓→動脈血→組織、②食べ物から胃腸→血液→組織、③空気や衣服・家具から皮膚・粘膜を通して体内に入るルートなどが考えられます。
私たちは空気、食べ物、衣服・家具を通してすべてマイクロプラスチック侵入ルートに晒されていることになります。
花粉症は何も花粉の侵入だけによらずこれらのMPsに対するアレルギーからもたらされている可能性もあります。
その可能性は筆者自身が感じ取っているのです。
それは花粉症の症状が花粉の季節に限らず症状の大差はあれ年中あること、そしてその症状が朝起きた時にもあることです。
筆者自身の花粉症の発症が屋外の空気中のみではなく部屋の空気、食事、接触する衣服・家具なども考慮に入れなくてはならないのですが、
その中のどのルートがより大きいのか検証が出来ていない状況です。

MPsは食べ物と一緒に腸に入ると腸内細菌叢にダメージを与えて腸からの栄養吸収を障害することも分かってきました。
さらにMPsは病的細菌・ビールスなどの腸内から血中への移行を促進することがあるようです(5)。
即ちMPsは体の免疫機構さえ障害することになります(5,6)。
またナノ単位の小さいMPsは細胞内に入り悪さをすることが示唆されています(1)。

空気中には多くのMPsが漂っていることはよく知られていますが、飲料水、食べ物やその容器、衣服には多くのプラスチック製品が含まれています。
即ち、私たちは常時これらのMPsにさらされていることになります。
野菜などに含まれる農薬とこれらのMPsが体内に入りどのように干渉し合うのかまだ研究されていません。これからの詳細な研究が待たれます。

地球の隅々までこのMPsによる汚染が広がりつつあります。
数年前、危機感を抱いた政府はプラスチックの使用制限を啓蒙しましたが、その効果はどうでしょうか?
一時、スーパーでも買い物にプラスチックの非使用を呼びかけましたが、現在、その効果は全く機能していないように思います。

改めて、人の健康に重大な被害をもたらす可能性のあるMPsを減らすべく思いきった使用制限と同時にそれに代わる製品の生産を緊急に真剣に考えないと地球上のすべての動物を含めて人類の将来は危ういものとなります。 地球温暖化の問題と共に緊急に真剣にその対策を講ずる必要があります。

 2024,04,17.

文献

  1. 日本学術会議・環境リスク分化会.マイクロプラスチックによる水環境汚染の 生態・健康影響研究の必要性とプラスチックの ガバナンス,2020
  2. Zhao B, et al. Sci Total 2Environ. 2024. PMID: 38043812
  3. Zhao Q, et al. Sci Total Environ. 2023. PMID: 36948312
  4. Jenner LC, et al. Sci Total Environ. 2022. PMID: 35364151
  5. Wu D, et al. J Adv Res. 2023. PMID: 36116710
  6. Hirt N, et al. Part Fibre Toxicol. 2020. PMID: 33183327
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